星をあげる

無数の想いが積み上げられた場所に独りで立つあの子は、さみしくないだろうか。向けられた刃の鋭い切っ先に怯え、泣いていないだろうか。
あの子の柔らかで、あたたかい心を守りたい。 冷たく無機質な悪意の雨に打たれないよう、傘を差し出せたら。暗い海を泳いでいくための道標となる灯台みたいな、光を渡せたら。

星をあげたい。世界で一番きらめく、大きな光る星を。
そんなことをずっと、ずっと考えていた。



今日は最愛のひと、那須雄登くんの22歳のお誕生日! はたちを迎えたのがつい最近のことのようだし21歳のお誕生日はあれ、昨日??と思ってしまうほど、時の流れを早く感じる。(毎年言ってるね)

21歳の那須くんはやっぱりとってもかっこよくて、昨日より今日の方が好きで、きっと明日はもっと好きだろうなあと思う日々だった。それは那須くんが自らの力で輝こうと、光ろうとしていたからだと思う。

那須くんの光は簡単にほどけることなく、刺繍のようにあの影に縫い付けられている。その光は、好きになってからずっと見つめてきたからこそわかるところもきっとあるはずで。

私は那須くんの自信家なところが好きだ。
決してでしゃばったりやりすぎたりはしないけど、新しい場所でいつも自信に満ちた顔でステージに立ち、ぴんと張った背筋、くらくらするほど眩しい大きな背中。その自信は、きっと勝手に湧いてくるものではなくて那須くん自身の努力に裏付けられたものだと思っている。こうやって決めつけるように人柄について書くのは本当は避けたいのだけど、那須くんは真面目で目標や夢まで前だけ向いてこつこつ頑張れる人で、その過程が座標みたいにつながってぜんぶ彼の輝きにそそがれているのだと、そしてそれが周りから得る信頼や花束のように向けられる愛に結びついているのだと、ずっとそう思っている。



でももしもその自信をすべて削られてしまったとしたら。もういいや、とあきらめてしまったら。
光を失って、星を追いかけなくなる日がすぐそこに来ているのだとしたら。

そんな不安を手にとる日がこんな近い未来に来るなんて、思っていなくて。

あの頃は、いちばん大切な人が四方八方から傷つけられているのを見ているのが本当につらくて、ここからいなくなってしまうかもしれないって怖くて怖くて仕方がなくて、おびえながらスマホを覗いては安堵と恐怖を繰り返していた。食事も最低限とれるかどうか、毎晩眠れず、それでも規則正しくやってくる朝を迎えては何度も涙をたたえながら仕事をした。
(今思うと本当に重すぎてやばい)
支えにしない、していない、つもりだったのに。ひとりで立てているつもりだったのに。こんなにもぐらついてしまうなんて、情けなくてまた泣いて。


でも。不思議なもので、涙に滲めば、もらったものがより鮮明に見えてくる。私の生活の中に、那須くんがくれたものが降り積もっていることを改めて知る日々。

たまたま入ったお店の有線で那須くんが好きと言っていた曲が流れて、当たり前みたいに那須くんを想う。仕事中いつも手にするのは那須くんがお気に入りと言っていた0.38mmの細いボールペン。なにか見ようと配信サービスを開けば那須くんが好きと言っていたドラマや映画がリストに入っていて、本棚には那須くんが読んでいた本が並ぶ。自然と増えていった青い小物、真似してそろえて買った指輪に香水。那須くんや美 少年を通して出会えた、綺麗なもの、楽しいことを分け合えるお友だち。お守りみたいに呟くくせがついた「大丈夫」って言葉。お気に入りの写真立てに入れて飾った、くしゃりと笑い皺が猫みたいにかわいくて大好きな、大好きな那須くんの笑顔。

生活の中に、心の奥底に。降り積もったたくさんのものをなにひとつ、手離したいだなんて思えなかった。



私はずっと、"信じる"ってなんだろう、とずきずき痛むように思っていた。好きだった人たちがアイドルをやめる経験を何度もしたからこそ、「信じてるよ」なんて、道を狭めるだけのエゴになってしまうかもしれないって思って言えなかった。でも、私は那須くんを信じたい。これから先のあなたを信じるって、強くそう思った。
それから、ずっと自分本位で身勝手な感情だと思っていたのに、守りたいなと思った。もたれかかり支えてもらって、依存だと言われてしまえば否定できないような私でも、大切なあの子を守りたい。「大丈夫」のひとかけらになりたい。
好きになってから何度も私の心をすくい、大丈夫にしてくれた那須くんを、今度は私が大丈夫にしたかった。

依存だと言われれば確かにそうなのかもしれない。 でも、どれだけ自分に問うても、想う温度は一向に冷めなかった。


信じたいな、大丈夫って伝えられたらな、と思っていた時、本人の言葉をやっと聞くことができた。人目につかないよう必死に声を殺して泣いて、言葉のひとつひとつを飲み込んだあの日を忘れない。

那須くんの書いた文章の中に、「傷つけて」という言葉があった。ああ、そうか。私は傷ついていたのか。
「傷つけて」という言葉を額面通り受け取ったわけではない。那須くんに傷つけられた、って振りかざすように言いたいわけじゃない。
でも本人に言われて、初めて気づいた。那須くんを大切に想う心ごと、傷ついていたんだな。


これは邪推だし見せたくない部分かもしれないけど、きっと那須くんだってぼろぼろで立っているのがやっとかもしれない。でも次の舞台はすぐそこで待っている。

私に何ができるのかな、と考えた。でも答えなんて、ずっとひとつしかない。あなたがこの船を降りないのなら、私もこの船を降りない。何度だって見つけ出してみせる。そうして、また「見つけてくれてありがとう」って笑ってくれる日を待ちたいんだ。
美談にしたいわけではない。でも想って泣いて眠れなかったあの日々も、この傷も痛みも、消えない私の一部だと思いたい。幸せでうれしかった思い出だけじゃなく、このかなしみも全部を抱えて生きて愛していたい。こうして言葉にすれば重たすぎる足枷みたいだけれど、かなしみの中にこそ光はあると知っている。私はその光を自分で選んだ。


そして、もしも那須くんが光を失いかけているのだとしたら、暗くてなんにも見えない道を歩いているのだとしたら。星をあげたい。あの子が望んでいたような、一番眩しくて、永遠に光る星を。
星を渡して、あなたの手のひらはこの光をつかめるって、そう伝えたかった。



そんな想いを身体いっぱいに詰め込んで、8月、東京ドームに足を運んだ。それぞれの色を持ち光るアイドルたちの中で、ひときわ光る姿を見つけだす。

ステージの周りが湖みたいに青く光がゆらめいて、その真ん中で、これでもかというくらいやさしい顔で手を振る那須くんがいた。ああ、よく知っている。手のひらを開いたとき中指と薬指がくっつく癖。変わらない癖が今更、とめどなく愛おしくなる。思わずぼろぼろ泣き出した私の背中を、隣にいた友だちが支えてくれた。

暗く染められた髪はライトに照らされ青を帯びた色に光る。どこか控えめなようで、でも確かな熱を含んだ瞳がきらりと瞬く。

星だ、と思った。私が渡す必要などないくらい、やさしくぼんやりと、でも強く光っていた。ふと、青く光る星はいちばん熱く燃える星だから那須くんにぴったりだねなんて話したことを思い出す。何万ものペンライトが織りなす光に負けない青い星が、そこにいた。


ずっと、ずっと滲んだ視界で見つめていた。ステージの上から手を振って「ありがとう」と何度も繰り返し言っているのがわかって、私に向けられたものじゃないのに、また心にかけた錠前を開けてもらうような気持ちになる。那須くんのふわりと下がる目尻を見ると、いつもほっと胸があたたかくなる。出会ったときからなにも変わらない、当たり前みたいに手渡され受け取ってきた、あの子のやさしさ。

星をあげたかった。それなのに、私はまた那須くんからもらって、抱えて帰った。



感情が整理できなくて抜け殻みたいになっていたまま、次の日、変わらない笑顔でテレビに映っている那須くんを見つめた。
番組の中で、「あ」から始まるとにかく大きなものを連想するとき、「アンタレス」と書いていた。ぴんときていない様子の共演者のみなさんに対し、まっすぐに「星です!」と言った。
聞き慣れた星の名前に、都合よく、運命だと思った。

大好きな、人生のバイブルの中にその星のことが描かれている。生き延びるために逃げ、結局井戸に落ちてしまい、こんなふうに死んでしまうのならばなぜこの命をくれてやれなかったろう、と嘆くさそりの話。
さそりは水の中で、祈る。「神さま、どうかこの次には、まことのみんなの幸のためにこの命をお使いください」。そう願ったさそりは星になって、さそり座の真ん中、"アンタレス"という赤い星になって今でも燃えているという。


私は那須くんに誰かの幸せを願うよりも先に、自分の幸せをつかむ人でいてほしい。誰かのカムパネルラにも、さそりにもなってほしくない。
でも、那須くんは10代の大切でかけがえのない年月も、多感だったはずの心も、20代になってからの自由で楽しい時間も、ぜんぶ失ったとは言わないけどきっとたくさん選んで置いてきて、自分自身を切り取り燃料にしてアイドルという星として光っている。自分のためだけじゃなく、応援している"誰か"のために今でもずっと燃えている。

そんなこと、とっくにわかっていたはずなのに。画面の中で綺麗に笑って星の名前を言った那須くんに、また気づかされた。
東京ドームでもらった星が、胸のなかでちかちかと瞬いているような気がした。



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お、おもて~~~~。重すぎる。
内容的に仕方がないのですが、お誕生日に贈るべき言葉ではきっとないなと反省しつつ、少し胸がすいている自分もいる。あの時のこと、傷や痛みだって言い切ってしまえたことに。
でもそれもずっとそばに置いて生きていきたいって思えるくらい、私はあなたを愛している、ということで。つまるところはね、結局そういうことを書き記しておきたかったんです。

最後に、少し前に読んだ小説の一節のお話をして終わります。(最長記録ですこのブログ)

星をあげる。いつだったかそんなことを考えていた。きらめく星を差し出せる男になる。そう思っていた俺は、ちっともわかっていなかった。星を受け取っていたのは、いつだって俺のほうだった。

星をくれてありがとう。 あとで、そう伝えよう。

幼いころ、主人公に思いを寄せていた男の子は、主人公の持っていた星のヘアピンを盗み "もっといい星を渡してみせる" と思っていた。でも、大人になって再会してやっと気づく。もらっていたのは自分の方だと。
あまりにも重なりすぎて、読んだ時にはらはらと涙が溢れた。気づかされたこのタイミングで、手のひらにぽとりと落とされたような言葉。

私も、忘れかけていた。いや、ちっともわかっていなかった。
那須くんを好きになってから今まで、どんな時でも。いつだって星をもらっていたのは、受け取っていたのは、私のほうだ。



どれだけ好きでどれだけ想っていても、私はきっと那須くんにとっての何者にもなれない。無数のペンライトの光のなかにただ佇むことしかできない。那須くんが望んだいちばん眩しくて永遠に光る、美しい星を渡せない。私はいつももらってばかりいるのだから。

でも那須くんがくれた星はいつだって私の中で燃えて、ぼんやり光っている。いつか、もらった星をぜんぶお返しできたらいい。それまでちゃんと綺麗な箱に仕舞って、大切にリボンをかけておく。いつかリボンをほどいて手渡せたらいいな。そして、星をくれてありがとうって、伝えたい。




那須雄登くん。星をくれて、ありがとう。
アイドルでいてくれてありがとう。光ってくれていてありがとう。

22歳のお誕生日おめでとうございます。あいしてる!